第18回海外視察研修

平成14年6月10日〜6月15日にかけて、(財)星総合病院の職員24名が
アメリカのロサンゼルスにあるUCLA medical center、Little Company of Mary Hospitalを視察してきました。

日  程
平成14年6月10日 アメリカ ロサンゼルスに向けて出発
第1日目 医療施設見学
 ・UCLA medical center
 ・Little Company of Mary Hospital  
第2日目 自主研修
第3日目 自主研修
6月15日 帰国

 参加者 24名 (医師・看護師・理学療法士・管理栄養士・事務員など)


経  過
 @平成13年5月より視察先及び視察施設を自主的にインターネットや図書館などで調べ、協議決定した。
 A視察先アメリカの国民性・風土・医療環境・保険など自主学習
 B視察先の施設とコンタクト


 研修者からの報告
●リーダー:医師 三田正行●
勤続10年となり海外研修に参加しました。
UCLA medical centerは、常に“America's best hospitals”の上位にランクされ世界的にもトップレベルにある病院でした。診断と治療、医学教育、研究が優れていることで、患者さんは最新で最良の医療を受けることができています。
 私たちが視察したのは、CCU、核医学、放射線治療の部門でした。CCUが10床、ICUが12床で2対1看護、重症患者では1対1の看護でした。CCUには心筋梗塞、不安定狭心症、PTCAやステントの治療を受けた患者が入院し、また、心筋に障害がある患者では65歳未満が心臓移植の対象となり、対象者の50%に移植がおこなわれ、日本からはもちろん世界中から受診する人がいるそうです。
 核医学や放射線治療部門では3−DのPET(positron emission tomography)scanを見学しました。PETscanは薬学と医学部のスタッフとで検査を行い、がんの転移部位の検索に大いに有用でした。将来広く普及していくようです。
またUCLAの物理と放射線部門との共同開発によるstereo tactic radio therapy は脳腫瘍や脊髄腫瘍、がんの脳転移の治療に有効で、腫瘍部位をピンポイントで破壊しガンマナイフよりもはるかに威力のある治療法となっていました。
 午後にはLittle Company of Mary Hospital を視察しました。この病院は日系人や在米日本人が受診するカトリック系の病院でした。日本には見られない、なかなか落ち着いた雰囲気の病院でした。きめ細やかな患者さんへの対応がなされているようで、安心して入院ができるという感じがしました。特に産科の病棟で、分娩後も母児同室で個室のまま入院でき48時間後には退院するという日本では考えられないシステムは驚きでした。
 私たちスタッフはUCLAの高度な医療や、安らぎを与えてくれるLittle Company of Mary Hospitalを実際に視察できて大感激でした。本やテレビ、新聞などからしか得られないアメリカの医療の現場の一部でもわかったことは貴重な体験でした。
 日本のマスコミでも、アメリカの医療事情を取り上げる機会が多くなってきています。しかし実際に見てみないと本当の現場の状況はわかりません。外観だけでなく中身から本物の病院の姿を見たような気がします。マスコミのフィルターを通さずに見ることが、私たちにより新鮮な感激と感動をもたらしました。
●第一医事課 渡辺明子●
青い空と心地よい空気、広い道路に流れるように走っている車
異国の地に降り立った私をこんなふうにカリフォルニアは迎えてくれた

UCLA medical center
ただ広いという言葉では言い尽くせない
"とてつもなく大きく広い"病院。それがUCLAの第一印象。
一般道路をはさんで両側にそそりたっていた。
エイズを1病院が国レベルでフランスと提携し研究している
案内の人も説明のスタッフも『全米1です』という言葉をさりげなく言ってのける。
最新の設備が満載、患者の重症度にあわせた専門チーム。
物品一つ、1本にも自動的に請求でき、在庫が分かるコンピュータ内蔵棚
立体映像で体の隅々まで患部が分かる機械。
患者をいかに短時間・短期間で治せるか・・・・の問いにハイテク機器を駆使していた。

ロスの街並
道路は片側4車線、高速道路とすぐ連結しており、でも車をふっと見ると日本車がいっぱい走っている。ホンダ・トヨタ・マツダ・ミツビシ見慣れた風景です。ただ運転しているのは外人というだけ。
町のいたるところにシンボルの樹を並べて、印象がとてもすてき。 

Little Company of Mary Hospital
一言でいうと癒しの病院です。
廊下のいたるところに癒しの絵、彫刻、モニュメント。看板にはちゃんと日本語の案内もある。光をふんだんに取り入れたロビー。病室は一人部屋があたりまえ。ホテルと間違うような、シャワー室、トイレつき。誰も白衣・ナースキャップや制服を着ていない。スタッフのラフな洋服、でも設備は超一流・・・。いたるところにコンピュータがあり、X−P1つをとっても、フィルムはいらない。撮ったその場で、Drが違うコンピュータで患者のX−Pを見れるシステムがある。
また病室にどんなスタッフがいるのかわかるランプが入口についていたり、患者を動かさずにスタッフが動くシステム。
さすがに全米や他国からも受診に来るのがうなずける。まさに働いてみたい病院だった。光いっぱいのロビーで小さな子どもがソファでおひるね。お父さんがそばでゆったり座っていた。

まとめ
どちらの病院もがやがやしている患者・スタッフなどいない。それは国自体がホームDr制が確立していて連絡網が徹底しているのがうかがえる。とても感動した病院視察でした。

トピックス
バスケットの優勝パレードが今まさに始まろうとしているところ帰国のバスに乗り込む。
白バイのポリスマンも、仕事とはいえウキウキしている。
優しく握手してくれた。 パレード・・・みたかったな。
●理学療法士 佐久間英俊●
 今回の研修のテーマは「バリアフリーのアメリカ」との着眼点で観察しようと思った。

 ロサンゼルスの特徴的な背景としてv
  ・海に近く、比較的平坦な地形であること、
  ・自動車社会であること、
  ・降水量が少なく年中温暖な気候であること 
があげられる。

これらに対して車椅子を使う点から見ると、
  ・起伏が少なく、歩道も広いため、左右に倒れる傾斜角が少ない、
  ・雨が少ないため排水溝が見られず、キャスターを溝に落とすことなく自由に動かせるのではないか
という利点が考えられた。

しかし実際宿泊地であるダウンタウンの中で車椅子を見る機会はなかった。地下鉄への昇降はエスカレーターが完備されており、見つけにくいがエレベーターも備わっていた。バスは低床式が使われていた。これらも実際に使っているところを見ることはできなかった。しかしスーツケースはロサンゼルスのほうが移動しやすいように感じた。
観光地で感じたことは、車椅子に載っている人も多いが、ギブスを巻いて松葉杖をついている人を多く見かけたことである。入院期間の短いアメリカらしさを感じたが、それ以上に時間を有効に使おうというバイタリティを感じた。日本では松葉杖を使っているうちは退院できないと思っている人も多く、生活習慣や環境の違いを感じた。
今回海外研修を受ける機会を得られ、バリアフリーに着目しようと思っていたが、町が危険であるというイメージがあり、周りの人に注意して環境を見る余裕があまりなかったように思う。また最新の理学療法に接する機会がなかったのは残念だが、バリアフリーを生んだアメリカを実際に歩いたことは貴重な体験となった。先駆的なアメリカの最新の医療に触れられたことを、今後は日米の生活習慣や社会環境の違いなどを考慮しながら、リハビリテーション医療にも役立てていきたいと思う。

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