第23回海外研修

 平成18年度、第23回海外研修はカナダのトロントにある3施設を視察しました。期間は、10月16日から10月21日の4泊6日間です。今回の研修から当院で卒後臨床研修中の研修医が参加することになり、研修リーダーの小児科部長佐久間弘子医師、事業本部星北斗本部長をはじめ総勢27名がトロントの医療を学んで参りました。

 カナダには「医療と教育はすべて平等」という理念がある

 カナダは国民皆保険体制を確立しており、診療や入院には国民の負担がありません。財源は税金です。歴史的経緯を経てカナダでは医療保険・福祉サービスは州が法を制定し、各州は住民の健康増進を実施する責任をもっています。

視察施設は、急性期医療 高齢者医療 小児医療の三つのテーマを設定し、それぞれのグループを中心に研修しました。各施設についてグループの報告書より紹介します。
ナイアガラの滝と霧の乙女号


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急性期医療
高齢者医療
小児医療
研修者からの報告



★急性期医療★


 クレジットバレー病院は1985年に開設、オンタリオ州ミササガ市周辺の第一、二、三次医療を行っている。現在年間約6万人の患者を受け入れ、外来には癌、腎臓、膵臓、糖尿病の特殊外来を設けている。職員は約3000人勤務していて、医師は300人いるが、常勤医はわずか5人で、殆どホームドクターが出入りしている。エントランスHealing and Hope「癒しと希望」がイメージされ光を多く取り入れた空間が作られている。建物内に植物も植えられ、一見すると病院とは思えない造りである。雇用者約2000人。総面積は約4万900u。医療提供対象90万人。ベッド数395床。
 
エントランスホール 中央 エントランスホールの床
院内Shop エントランスホール
 
 
クレジットバレー病院を見学して

 カナダの税収は医療に使われている割合が非常に高く、設備面で非常に充実しているという印象を持った。また、患者個人の医療費負担も無償であることから地位、身分に関係なく平等に治療をうけることができるのは非常に安心するのではないか。生きていくうえで最低限の生活を保障する社会構造だと感じた。所得の格差があっても各々に幸福感は持てそうな気がする。ただ、サービス面や勤労意欲は日本のほうが良いのではないか。私は今回、カナダの文化、慣習に接して新しい知識を蓄積することが出来た。この事がまた新たなアイデアを生み出していくことだろうと期待している。
                                        (文責 T)

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★高齢者医療★



長期介護施設 ウェルズリー・セントラル・プレス(CCACの1施設)
CCAC(コミュティ・アクセス・コーポレーション)。CCACは、1997年にオンタリオ州の長期医療改革の一環として在宅ケアのプログラムと紹介事業を統合し同州政府が設立した。100%州政府が出資する公営事業の非営利組織。CCACの役割は、在宅、学校のヘルスケア 長期医療施設への入所手配、個人の合わせた地域医療、支援サービスの紹介・情報・アクセス提供などサービスの提供と質のコーディネーションとモニターとなっている。


デイルーム 浴室

居室

居室には愛用の家具が持ち込める
        メモリーBOX


スヌーザリングという、人の五感を刺激して精神安定を誘い出すケアがある。
スヌーザリングに使用する物品
 
高齢者施設を見学して

CCACは、日本の介護保険システムと障害者自立支援システムを合わせたシステムであると思った。サービス利用の問い合わせから始まり、インテークワーカーがスクーリングし、一番良い方法を検討して決定する。ワーカーの存在の重要性とその後のサポート体制がしっかりと機能している点、各チームが連携して行っている点は、今後わが国においても実施することができる。と考えた。
日本との違いはあるものの、日々行っている業務や患者さんのニーズを第一に考えケアしているところは共通したものであると思った。
                                                      (文責 I)


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★小児医療★



トロント小児病院(Sick  Children's Hospital)。100年以上の歴史をもち、最高水準の医療を提供する専門病院として世界に知られる。北米最大かつ最も徹底されている世界的にも有名な病院である。職員数3,400人以上。580人の医療スタッフ、1260人の研究スタッフが在籍している。




病院の外観
メインエントランスホール

 
トロント病院の原点・ポリシー
ファミリーセンタード・ケア(患者と家族を中心に据えた医療)
ディスカッション中 院外の空間の一部
 
トロント小児病院の画期的な活動
チャイルドライフとソーシャルワーク
「チャイルドライフとは小児、青少年の患者が心の安定を得るための心理社会的支援」
「ソーシャルワークとは患者とその家族が病気から受ける苦痛を和らげる心理社会カウセリング等のサポート」
院内の壁の一部 院内図書室
チャイルドライフのスタッフ 院内図書室の閲覧室
 
院内教育
114年前からトロント小児病院とトロント教育委員会は提携を結んでいる。
 

医療と教育のコラボレーションの大切さ
病気の子供たちに「病院で教えたこと、関わったこと」の研究結果を地域や子供の通っている学校に提供し教育に役立てている。また、医師と教師の研究発表がある。
院内のてんかん児クラス
 
トロント病院を見学して
小児医療を語るとき、必然的に提起されるのが心身の成長と発達である。その過程に必要となることを多くの人は深慮すべきである。しかしながら、我が国において小児医療は、いうなれば独立した分野と、捉えられている。トロントで知り得たのは、医療、教育、地域、親、家庭を巻き込んで医療が成り立つというあたりまえの医療体制である。子供が人として健康に成長発達していくために、全ての事柄を総合し擁護していく。このことはそれらに携わる全ての者が普通の概念として捉えることが大切である。「医療と教育は全て平等」というカナダの理念はどことなく安堵な社会を作り出している。模倣することよりもそのような社会が存在していることを啓蒙すべきだと強調したい。
                                                                     (文責 S)


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研修を終えて


日本の医療水準は世界のトップレベルと言われています。医療に携わる者として他国の医療を知り国内の医療の視点を変えて見つめ直す。そして、今後の医療、看護に求められているものを広い視野で学び意識していきたいと考え研修に出かけました。今回学び得たことは、意識改革のツールになることでしょう。近頃、子供の自殺、いじめ、学校教育の問題が取り沙汰されています。社会的な問題の是正は国の立法や行政の違いから困難ですが、医療者としてだけでなく、それぞれが一個人として多くの知識を持ち世の中を捉えなければならないと考える契機となりました。
                                                        (編集 S)
トロント病院の前で 
              研修スタッフ27名


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