平成12年度海外視察研修


今年は29名の職員をオーストラリアに派遣しました。
小野常夫星ヶ丘病院副院長を団長とする一行は、10月29日から11月3日にかけて、高齢者介護・リハビリテーション施設である、ホーンズビー・クーリンガイ病院など3カ所を視察しました。


 病院は公立と私立に分けられ、主要都市には最低でも2〜3の公立病院が存在する。公立病院にはすべての診療科が揃っており、24時間オープンの緊急病棟がある。緊急の場合はこのような病院に行くことになるが、比較的軽い風邪などで行くとかなり待たされる場合がある。緊急を要さない場合はまず一般開業医で受診するほうが能率的である。
 市立の病院の規模は小さめで、総合病院であっても緊急病棟はほとんどない。それほど緊急でない治療や手術を専門医から受ける場合に使う。
 保険制度には国民健康保険と民間保険(いわゆる”プライベート”)があり、国民健康保険は全員加入となっていて課税所得の1.4%が保険料として徴収されている。したがって公立病院で受診すると受診料は無料となる。一般開業医や専門医の場合は受診料の85%が保険から支払われることになる。
 民間保険は国民健康保険でカバーされない部分を補うもので、従って、この保険を使うことによって患者さん自身の都合で検査や手術の日程が決められるだけでなく、医師を自ら指名するということも可能である。
 入院に関する費用は退院時に一括して支払うのではなく、それぞれの部門、例えば、外科医、麻酔医、検査などから別々に請求される。
ホーンズビー・クーリンガイ病院(高齢者介護・リハビリテーション)
ボランティア活動が充実
シドニーに5カ所ある公立病院のひとつで、都市の中心から北へ30キロに位置し、ベット数は260床で公立病院で2番目の規模を有している。
この病院はホーンズビィとクーリンガイの2自治体区をカバーし、その人口は約25万人で、65歳以上が14%を占めており、高齢化が問題とされている。
リハビリテーションおよび高齢者ケア・サービスにおいて各部門や地域との連携体制が確立している。急性期内科、外科、広範囲な地域サービスを提供しており、自治体区住民の健康増進および健康意識の向上を推進しているほか、一般開業医や地域サービスとの連携による境界線のないケアとサービスを提供している。
この病院の特色としては「ピンク・レディー」とよばれるボランティア活動があり、患者さんの買い物や手紙の代筆などの世話をピンクのユニフォームを着たボランティア(現在138名登録)が行っている
ゴールドコースト病院(精神科)
精神障害者を地域で支える
精神科の病院であり、医師8名、看護婦150名、作業療法士40名が勤務している。20年前までは400〜600床があって、入院を中心とした医療が行われてきたが、現在は44床があるだけである。当院の入院患者層はそう鬱病40%、分裂症40%であり平均在院日数は11日で、その後は地域でケアされる。他施設(他国)からの研修も積極的に行っている。
サーフェデュケイトオーストラリア(ライフセーバー活動)
誇りを持って活動を
海水浴場でライフセーバー(人命救助者)活動を行っている団体である。オーストラリアのライフセーバー活動は国からの補助金と寄付金で運営されており、オーストラリアの海水浴シーズンである9月から4月までの間ボランティアによって支えられている。
片岡宏之(看護部・放射線科)
オーストラリアの保険制度には国民の3分の1が加入しているプライベートの健康保険があって、患者さん自身の都合で検査や手術の日程が決められるだけでなく、医師を自ら指名できるという事は大変関心を持った。ピンク・レディーとよばれるボランティア活動には感心させられた。ほとんどの人は週1回朝の8時半から午後3時まで病院にいて患者さんの世話をしているということであった。日本にはこのようなボランティアの少ないことを実感した。一般病院や精神科病院の入院平均日数が日本と比べて大変短いことに驚いた。患者さんを取り巻く医療体制や病院、ボランティアによるケアと連携が行き届いているからだと感じた。


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