星総合病院心臓病センター
心臓の病気について

当心臓病センターで治療に力を入れている心臓の病気についてご紹介いたします。

★虚血性心疾患

心筋に酸素と栄養を送る冠動脈に障害が起きる病気を虚血性心疾患と言います。これは狭心症と心筋梗塞に大きく分けることができます。この虚血性心疾患は現在、心臓疾患の中では最も多いもので食生活やライフスタイルの欧米化に伴い増加しています。

★狭心症

心筋を養う冠動脈の内腔が狭くなって、心臓の筋肉に十分な血液が流れなくなる状態です。心臓に必要なだけの栄養と酸素がなくなると、心筋は酸素と栄養不足に陥ってうまく働けなくなります。この時に患者さんは胸が締め付けられるような痛みを感じます。これが狭心症の発作です。冠動脈は狭くはなっていても、閉塞しているわけではなく少しは心臓の筋肉に栄養と酸素が供給されていますから、心臓の筋肉が壊死に陥ることはありません。これが狭心症と心筋梗塞との最大の違いです。狭心症の発作は普通長くとも15分程度で終わります。30分以上発作が続くときには急性心筋梗塞を疑う必要があります。

狭心症の中でも階段を上がったり、走ったり、興奮したりして心臓に負担がかかった時に発作が起こるものを労作性狭心症と言います。一方逆に夜中に寝ているときや静かに休んでいるときに突然胸が苦しくなるものを安静狭心症と言います。労作性狭心症は冠動脈の動脈硬化による狭窄が原因とされます。
一方、安静狭心症は冠動脈の攣縮、つまり血管がけいれんを起こして一時的に狭くなる状態、これが発作を起こしていると考えられています。

※ 狭心症の発作が頻繁に起きる時には、急性心筋梗塞になりかかっていると考えられます。
  この状態を不安定狭心症と言います。急いで循環器専門医を受診する必要があります。


★急性心筋梗塞

急性心筋梗塞とは心臓の筋肉、つまり心筋を養っている冠動脈と呼ばれる血管が閉塞することにより、心筋に栄養と酸素がいかなくなり壊死することです。壊死に陥った心筋は収縮する力がありませんから心臓の働きが悪くなります。急性心筋梗塞は最も痛みの激しい病気の代表で、胸が締め付けられるように痛くなり、万力で絞められたようだとか、象に踏まれたように痛いと表現される患者さんもいるくらいです。痛みだけでなく死の恐怖感を伴うことが普通です。冠動脈がより根元の方で閉塞し、多くの心筋が壊死に陥ると、心臓のポンプとしての機能がとてもわるくなり、全身で必要なだけの血液を送り出すことができなくなります。このような状態を「心不全」といいますが、重篤な場合「心原性ショック」と呼ばれる状態になります。一旦、心筋梗塞に陥ると脈の乱れつまり不整脈も起こりやすくなります。この不整脈の最も極端な場合が、「心室細動」と呼ばれるもので、処置しなければ死に至ります。また頻度は少ないですが壊死に陥った心臓の筋肉が裂けてしまい「心破裂」と呼ばれる状態になることもあります。一旦、心破裂に陥ると救命することは困難です。

★心臓弁膜症

心臓にある4つの弁(心臓の扉)の中でどれかがスムーズに開閉しなくなり、心臓のポンプとしての働きに障害が出る病気です。弁の働きが悪くなるのには2種類あります。ひとつは弁が癒着したり、硬化して十分に開かなくなる狭窄症、もう一つは弁が本来閉鎖すべき時にも隙間が残り閉じなくなる閉鎖不全症です。閉鎖不全症は閉じなくなったときに血液が逆流するので、逆流症と呼ぶ場合もあります。心臓弁膜症は軽い場合には症状がないことも多いですが、徐々に息切れ、呼吸困難、むくみなどの症状が出てきます。症状が軽い場合には安静や薬物療法だけで十分ですが、重症の場合には手術をして弁を直接修復する必要がある場合もあります。

★心筋症

心臓の筋肉が変性してくる病気です。原因ははっきりとしない場合が多く、ウイルスの感染や遺伝の関与もあるといわれています。しかし、はっきりとした原因は不明であることがほとんどです。変性に伴い、心臓の筋肉を構成する心筋が減少し、心臓の壁がうすくなり内腔が拡大してくる拡張型心筋症と、逆に心筋細胞が肥大し壁が厚くなる肥大型心筋症に大別されます。この拡張型心筋症と肥大型心筋症を混同して誤解し悩んでおられる患者さんも多いようです。単に心筋症といわれている場合にはどちらのタイプなのか、担当医に尋ねてください。

★不整脈

心臓の収縮と拡張を繰り返す拍動のリズムが乱れる状態を不整脈と言います。不整脈といっても多くの種類があります。その主なものとしては、期外収縮、心房細動、心房粗動、心室頻拍、発作性頻脈などがあります。不整脈そのものは心臓の機能的な問題であり、心筋梗塞などの疾患とは区別して扱われることが多いです。しかし患者さんにとっては症状の訴えが強く、精神的にも負担の大きい病気です。不整脈の種類にもよりますが、ある程度の不整脈は生理的なもので心配はありません。また、不整脈のタイプによってはカテーテル・アブレーションという方法で根治させることもできます。まずは、専門医を一度受診して、自分のもつ不整脈のタイプを調べてもらい、それに応じた対策を講じる必要があります。また、不整脈は寝不足や過労そしてストレスによって悪化します。不整脈をもつ方は十分に睡眠をとり、ゆったりとした生活を心がけましょう。脈拍が遅くなる不整脈もあります。洞結節の働きがわるくなる病的洞結節症候群や、心房と心室の間での刺激の伝導が悪くなる房室ブロックなどが代表的疾患です。病状にもよりますが失神、ふらつきなどの症状があるときにはペースメーカーと呼ばれる機械を植え込む手術が必要となる場合もあります。

★高血圧症

心臓はポンプとして血液に圧力をかけて全身の血管に送り出しています。一方でその圧力は動脈の血管の壁を押す力となって働きます。この血液が送り出される力が、血管壁にかかる圧力つまり血圧です。高血圧はストレス、過労、生活環境、食生活(特に塩分の取り過ぎ)、肥満、遺伝的な因子などがからみあって起こります。これといった1つの原因だけでわからないことが普通です。この様な高血圧を本態性高血圧症と言います。高血圧の初期にはほとんど自覚症状がないのが普通です。たまたま血圧を測った際に偶然見つかることが多いです。しかしどこか痛いとか苦しいといった自覚症状がないからといって放っておくと、やがて病気で困ることになります。血圧が高いまま放置しておくと血管の動脈硬化が促進されます。動脈硬化が起こるとさらに血圧が高くなり、高血圧症を悪化させるという悪循環に入ります。血圧が高くなるとより強い力で心臓は血液を送り出さなければならなくなり心臓の筋肉が厚くなって心臓が肥大してきます。心臓の肥大が著しくなると働きが低下し心不全を生じる場合もあります。高血圧症を指摘されたときには自覚症状はなくとも血圧を下げる努力が必要となります。まずは朝昼夕と血圧を測り紙に書いてかかりつけの先生に診ていただいてください。

★閉塞性動脈硬化症

動脈硬化とは血管、とくに動脈が弾力性をなくしてもろくなることです。血管の中に粥状の塊ができて血管の内腔が狭くなってきます。これが手足の血管に起こると筋肉の酸素や栄養が不足し、動くとしびれや痛みとして出てきます。タバコは血管を収縮させるため、禁煙が絶対必要です。必要であれば血管を拡げるお薬や風船で拡げる治療も行います。症状が出てくるようでしたら早めに受診してください。動脈硬化はある程度は生理的な変化で完全に防ぐことはできませんが、動脈硬化をなるべく遅らせるような生活習慣と食習慣を身につけるよう心がけましょう。

★大動脈瘤・大動脈解離

心臓の左心室が、全身に向けて血液を送り出している根本の太い血管を大動脈と言います。この大動脈に瘤のようなものが生じる病気を動脈瘤と言います。主なものに大動脈瘤と大動脈解離があります。大動脈瘤は大動脈の壁の一部が血圧に耐えきれなくなり大きく膨れてくるためにおこります。
この瘤は徐々に大きくなりある一定の大きさを超えると破裂して体の内部に大出血を起こします。破裂してから救命することは難しい場合もあります。動脈瘤のできる場所が横隔膜よりも上の胸の領域にできるものを胸部大動脈瘤、横隔膜よりも下のおなかの領域にできるものを腹部大動脈瘤と言います。動脈瘤そのものは存在しても普通痛みはないので健康診断などでたまたま発見されることがあります。声がかすれることで発見されることも多いです。動脈瘤が小さく特に症状のない時には半年から1年に1度程度の定期的な検査を行って様子を観察します。動脈瘤の大きさが直径で約5センチ以上になった時には破裂する危険が高いため手術を行います。これは、瘤の部分の大動脈を人工血管に置き換える手術です。大動脈解離は動脈瘤でも特殊なタイプです。大動脈の壁は外膜、中膜、内膜という3層の構造になっています。内膜に何らかの原因で傷が入り、血管の壁を構成する3層構造が中膜で剥がれてしまう病気です。外膜という外側の薄い膜だけで血圧を支えきれない場合には、破裂し身体の内部に大出血を起こし命にかかわることがあります。激しい痛みを伴う病気で緊急に手術をする必要がある場合もあります。また手術を行っても死亡率が高い病気です。症状が出る前に相談しましょう。



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