星総合病院心臓病センター
心臓カテーテル検査について


検査・治療について PCIについて 急性心筋梗塞・狭心症について


検査・治療について
 当院循環器科で最も力を入れているのは狭心症・急性心筋梗塞などの虚血性心疾患です。
 狭心症や心筋梗塞の確定診断にはカテーテル検査が必要です。多くの病院ではまだ数日間の入院検査となっていますが、当院では日帰り入院カテーテル検査を行っています。
 その他、手足の動脈が細くなる動脈硬化症の治療はカテーテル治療が主となっています。これまで困難であった、慢性完全閉塞の血管に対する治療や切断が必要とされていた下肢の治療も高い成功率をおさめています。
 またペースメーカー診療は心電図検査・各種画像診断・心臓電気生理学的検査等、皆様のご相談にお応えできるよう万全の体制を整え、より正確な診断に努めております。
 なお当施設は心臓血管専用造影シネ装置2室を装備し、日本心血管インターベンション学会の教育研修施設として認定されています。

 主な設備
  ●心臓血管カテーテル専用検査室2室
  ●人工呼吸器16台
  ●経皮的心肺補助装置1台
  ●大動脈内バルーンポンプ4台
  ●血管内超音波3台
  ●人工透析器6台 CHDF4台



第一心カテ室

第二心カテ室

心カテ操作室


心電図検査について
心電図とは心臓の動きを電気を通して診る検査です。最も簡単な検査です。
手足と胸に電極と呼ばれるシールのついた電線を貼り付け力を抜いて寝ているだけです。30秒ほどで終了します。
これは狭心症や急性心筋梗塞、陳旧性心筋梗塞、不整脈などがあるか確認する検査です。
当院では2階心電図室にて行っております。
http://www.cardiac.jp/view.php?target=conduction_system.xml

胸部レントゲン検査について
「レントゲン」とは、エックス線を発見したひとの名前です。
1895年の11月8日、レントゲン博士は、陰極線の研究中にあたらしい放射線を発見しエックス線と名づけました。
レントゲン博士の栄誉をたたえ、エックス線はレントゲン線ともよばれます。
つまり胸部レントゲン検査は、胸部エックス線単純撮影検査といいます。
心臓に異常がある場合、肺に水が溜まりやすくなったり、心臓が大きくなったりします。
これを確認する検査が、胸部エックス線単純撮影検査(胸部レントゲン検査)です。
 エックス線は金属を通過しにくい性質がありますので検査の際には上半身の衣服は脱いでいただくことになります。
当院では一階放射線科の撮影室にて行っております。
 もしも、診察のときは妊娠の可能性がないと答えたけど、検査室にいくまでの間にもしかしてと不安になったりしたときは、検査前に遠慮なく担当の放射線技師にいってください。

心超音波(エコー)検査について
 心エコーとは、体表面(胸部)から超音波をあて、そこからの反射をひろい画像として表したものです。
超音波とは、「人が聞くことを目的としない音」のことです。この超音波を用いて検査をしているため、人体に害はなく、誰でも何度でも繰り返し検査が出来ます。
 検査は、上半身裸になっていただき、左側臥位でベッドに寝て検査します。
胸部(心臓付近)にゼリーを塗って、超音波を出すプローブ(小さい機械)をあてると画像がでます。
機械が当たる時に少し痛いかもしれませんが、それ以外の痛み等はありません。
 検査時間は30〜40分ほどかかります。お手洗い等、先に済ませていただくようお願いします。
 心臓の検査ですので、食事制限はありません。
心臓の形態・性状(大きさなど)や動き(心臓の収縮など)等の観察に加えて、心臓内の血流の状態、
心臓の弁の異常・逆流や狭窄の有無など、非常に多くの情報が得られる検査です。

トレッドミル運動負荷試験
安静時心電図検査では症状のないときの狭心症を発見できないことがあります。
そういうときには運動していただき心電図に変化が起こるかをみるという方法があります。
これがトレッドミル運動負荷試験です。
心電図、血圧計を装着し、トレッドミル(ベルトコンベア)の上を走っていただきます。安静時の測定後、
少しずつ運動を強くし、一定の心拍数に達するか、症状を伴う心電図変化がみられたら運動を中止します。
 この検査で心電図変化を伴う発作がみられた場合、心筋シンチグラム、冠動脈CT検査、
冠動脈造影検査等の詳しい検査が必要となります。
 不整脈の診断や管理にも運動負荷試験は有用です。不整脈の種類や原因は様々ですが、一般に、
運動などの負荷によって悪化する不整脈は病的なものである可能性が高く、精密検査や管理・治療が必要となります。
 汗ばむ程度の運動をしていただきますので、運動のできる服装(運動パンツ、Tシャツ、運動靴など)
汗を拭くためのタオルをご持参ください。

これらの検査を外来にて行い狭心症を疑われた時に行うのが心臓カテーテル検査です。
心臓カテーテル検査
心臓は全身に血液を送り出すポンプの働きをしている重要な臓器で、筋肉が収縮と拡張を繰り返すことで
血液を全身に送り出しています。しかし、その筋肉が動くためには栄養と酸素が必要になります。
心臓の筋肉に栄養と酸素を運ぶ血管が冠動脈と言われる血管です。この冠動脈が狭くなった状態が狭心症です。
カテーテルとは合成樹脂でできた細長い管のことで、これを腕や大腿の動脈から入れて血管を通して心臓まで到達させます。そして心臓の内部の血圧を測ったり、カテーテルを通して造影剤(エックス線フィルムに写る薬剤 )を心臓の内部や血管の中に流し込んだりすることによって、心臓の働きや冠動脈がどのくらい細くなっているか重症度を診断します。

現在この心臓カテーテル検査が最も多く行われている病気は、狭心症や心筋梗塞といった、いわゆる虚血性心臓病といわれる病気です。

当センターでの検査の流れについて
当センターでは外来受診していただき狭心症が疑われたら心臓カテーテル検査の入院予約をさせていただきます。

基本的に心臓カテーテル検査の前日に入院していただきます。
入院は午前中に入院していただき、午後に心臓カテーテル検査の順番が決まります。

検査は1階カテーテル検査室にて行います。

朝9時から始まります。お一人の方でかかる時間は検査だけなら30分程度とお考えください。
治療になりますと難しさにもよりますが1時間から4時間。場合によっては6時間近くかかることもあります。

看護師が検査室まで誘導させていただきますので、順番までは検査着に着替えて病室でお待ち下さい。

カテーテル検査室では検査室の看護師と技術師、放射線技師、医師がいます。
なにかありましたらお声をかけてください。


心臓カテーテル検査室内での流れ

1    検査台に仰向け寝ていただき、穿刺部位を消毒します。
    (多くは手首、肘部あるいは大腿部)
2    局所麻酔を注射します。(歯を抜く時と同じ麻酔です。)
3    穿刺針で動脈(検査によっては静脈も)を穿刺します。ガイドワイヤーと呼ばれる
    やわらかい針金を挿入し、シースと呼ばれるカテーテルの出入り口を挿入します。

検査中で痛いのはここまでです。

4    ガイドワイヤーを用いてX線透視下でカテーテルを挿入していきます。
    血管内は痛みの感覚はありません。カテーテルは直径約2mmと細く
    (心臓血管の直径は約3 - 4mm)、先端は柔軟に作られており、
    患者さん毎に使い捨ての滅菌された器具です。

5    冠動脈にカテーテルを挿入し造影剤を注射器で注入しながら撮影します。
    これを左右の血管について数方向づづ行います。

6    カテーテルを交換して心臓の部屋の撮影を行います。
    この際、造影剤の注入により胸からお尻にかけて一時的に熱くなりますが、
    これは数秒間だけです。

    この他に患者さんの病状に応じてさらに別のカテーテルで内圧の測定や造影、
    薬物負荷を追加します。

7    検査が終了し血圧や症状に異常がなければ、カテーテルを体外に抜去します。

8    シースを抜去して止血を行います。
    (手首・肘部は止血ベルトで3-6時間、大腿は用手圧迫でその後4時間〜翌朝まで安静)

心臓カテーテル検査の安全性

残念ながら危険性が全く無いわけではありません。一時的にせよ体内に薬物や器具を入れる以上、常に何らかの不測の事態がおこることを考慮しておかなければなりません。
最近の全国的統計によれば、この検査が原因で死亡する患者さんは約5,000 - 10,000例に1例の割合と言われています。

穿刺部位の痛み
カテーテル挿入時:

局所麻酔を使用しますが完全に無痛となることは無く、シースが入るまでに軽度の痛みを自覚することがあります。
痛みが強い場合は麻酔を追加します。その後の検査中は痛みは感じません。

検査終了後に行う止血操作:

手首・肘部から行った場合は透明なベルトで止血を行いますが(約3時間)、途中で痛みが生ずることがあります。
徐々にベルトを緩めて止血を確認していく方法ですので、多くの場合は強い痛みはありません。

出血

ガイドワイヤーやカテーテルの材質は血管に比して柔らかいため血管を穿孔して体内で出血を生じることは考え難いことですが、理論的に全く無いとは言い切れません。万一そのようなことが生じた場合直ちに心臓血管外科に応援を依頼し、全身麻酔下で止血手術が必要となりますが、場合によっては致命的となります。しかしこれは極めて稀なことですが、可能性がないわけではありません。出血で注意が必要な点は、カテーテルを挿入した穿刺部位からの出血であり、これに対しては十分な止血が必要です。順調に止血が行えた場合でも黒色の皮下出血をほぼ全例に生じます。ただし、これは検査後約2週間から1ヶ月で消失します。

アレルギー

カテーテル検査で使用する薬剤にアレルギーがあり、使用することで気分不良、じんま疹、場合によってはさらに重篤な呼吸困難、血圧低下などの症状を来すことがあります。事前に問診を行い過去のアレルギーを確認します。最も頻度が高いのが造影剤で、検査が始まってすぐに少量の造影剤で反応を確認しますが、少量でも重篤な反応を生ずることもあります。いずれにしても検査用薬剤によってアレルギー反応を生じた場合を想定して直ちに対処できるような態勢をとっています。ちなみに造影剤により致死的なアレルギーを生ずる可能性は100,000例中1例といわれています。

今までにお薬で体に合わなかった経験がある場合には看護師、担当医の先生に早めにご相談ください。

血管閉塞

ガイドワイヤー、カテーテル、あるいは検査使用薬物により心臓血管あるいは重要血管が閉塞することが極めて稀に生じます。このような場合は直ちに血管を修復するような手術が必要になる場合があります。当院では心臓外科や脳外科と相談し適切な方法で対応させていただきます。しかし、脳梗塞の場合は障害が残ってしまう可能性があります(10,000人に1人と言われています)。予測不可能な事態ではありますが出来るだけの処置をさせていただきます。

腎臓機能障害

検査前の腎臓機能が何らかの原因で低下している患者さんの場合、基本的に造影検査は望ましくありませんが、病気の治療上の必要性から敢えて施行することがあります。この場合腎機能がさらに悪化することもあり、人工透析が必要となる症例があります。担当医と事前に十分な話し合いが必要です。

感染症

カテーテル検査は手術と同様の操作で行われるため細菌性の感染症は極めて稀です。検査前より予防的に抗生物質は内服していただきます。

その他心配なことがありましたら担当医、看護師にご相談ください。



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経皮的経管的冠動脈形成術(PCI)について
 虚血性心疾患の原因は,動脈硬化により冠動脈が狭くなることよって心臓筋肉が酸素や栄養不足になることにあります。
1950 年代に Sones 氏により選択的冠動脈造影が開発され,冠動脈の動脈硬化を明瞭に描出することが可能になると,細い血管を手術にて血流を改善させる冠動脈バイパス手術が施行されるようになり,またたくまに広く普及していきました。
 開胸を必要としないカテーテルによる治療の概念は古く,1960 年代の Dotter 氏はカテーテルにより冠動脈の動脈硬化を内側から開大するブジー効果を考えていたが,カテーテルの太さの不足やカテーテル抜去後の血管がつぶれてしまうなどのために有効な治療法とはならなかった。
Dotter氏 の報告以後,カテーテルによる血管拡張のコンセプトはほとんど顧みられない時期が長く続きました。
Gruentzig が先端にバルーンを装着した細いカテーテルを用いて,バルーンが病変部に到達してはじめてバルーンを拡張することにより有効な血管径を得る方法を開発し,1977 年に初めてヒトの冠動脈への応用を報告し、経皮的経管的冠動脈形成術(PCI)は虚血性心疾患の治療に大きな変化をもたらし,現在では、胸を切開する外科的治療なしに多くの患者が救われるようになりました。
Gruentzig が PCIを開発した当時は,プロトタイプの PCI 拡張用カテーテルはバルーンの先端に硬いガイドワイヤーを付けた操作性の悪いデバイスであり,比較的単純な病変を対象としているにもかかわらず,その成功率は必ずしも高くはなかったようです。PCIの成功率を大幅に高めたのは,Simpson により開発されたガイドワイヤーとバルーンを別々の道具として用いたオーバーザワイアー式の PCI 拡張用カテーテルシステムでした。操作性のよいガイドワイヤーを使用することにより,蛇行の強い血管や末梢病変にも適用可能となり,PCI の適応は一気に拡大していきます。その後、色々な血管拡張を試みる道具が開発されてきた。動脈硬化を削り取るDCAや石灰化をきたした血管を削り血流をつけるローターブレーターなど現在でも日常的に用いられている道具である。中でもステントとばれる金網を丸めた道具は現在の治療には欠かせないものとなっています。そもそも「ステント」という用語は,19世紀の英国の歯科医であったCharles R.Stentの名前に由来するといわれています。すなわち,彼は歯の鋳型を造るための器具を開発し,それをStentと命名したのが始まりとされ,以後「内腔を保持する鋳型状のもの」という意味で使われるようになったとされています。人体に鋳型を使用することは決して新しい概念ではなく,事実古代エジプトでは尿管狭窄の治療法として中空の藁の茎を使用したようです。
日本では、1990 年から Palmaz−Schatz stent の臨床治験が行われ、1995年以降、ステントは日本国中に爆発的普及を来たしていきました。
 現在、当院でも治療の80-90%にはステントが用いられております。
 
症例1
急性心筋梗塞にて救急搬送された50歳代 男性
翌日には歩行開始し10日後には退院されました。
 
当院で最も力の注がれているのは狭心症の中でも血管が完全につまった状態で時間が経っている慢性完全閉塞(Chronicle Total Occlusion)病変へのカテーテル治療です。
福島県内のみならず東北各県の循環器の先生方から治療の依頼があります。
症例2
いわき市の病院からの依頼にて治療した70歳代 女性
慢性完全閉塞病変のカテーテル治療は時間がかかります。ガイドワイヤーが1mm進むのに1時間かかることもありますので治療時間は2〜6時間と考えていただければと思います。時間をかけて慎重に手術していきますが必ず治療が成功するものばかりではありません。日本各地に上手な先生方がおられて日々努力をしておられますが平均でも成功率は94-97%との報告があります。当院でも93-96%の成功率です。これからも努力を続けて100%を目指してがんばっております。

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急性心筋梗塞・狭心症の患者様の対応に関して
急性心筋梗塞や狭心症は基本的に胸痛を来たす病気です。人によっては症状もさまざまですが胸の痛みや胸の締め付けられる感じ、胸の圧迫感、首から顎の痛み、みぞおちの痛みなどを訴えれる方々が多いようです。これらの痛みが30分たってもよくならないようでしたらまずは近所の先生で心電図検査を行っていただきましょう。
当センターでは、近所のかかりつけ医の先生からご紹介された狭心症、急性心筋梗塞の救急患者さんは24時間体制で診療ができるよう体制を整えております。

 またセカンドオピニオン(主治医による診断や、治療の説明のほかに、他の医師の意見も聞き、納得して治療を受けること)をご希望の方は外来予約されてください。
木曜日午後以外はいつでも循環器医師が対応いたします。
できればかかりつけ医の先生にご相談されて検査等の記録も持参いただければスムーズに診察させていただけると思います。

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