股関節・人工股関節センターとは

 星総合病院では令和3年4月1日に股関節・人工股関節センターを開設しました。
股関節の専門医が診察する病院です。症状が軽い時には生活の工夫や運動リハビリなどの保存療法を、 症状が強く改善が得られない時には手術療法も行います。
(動画はこちら)
 患者さんそれぞれの股関節の状況にあった治療を考えトータルケアするところです。
 コロナの影響はありましたが、多くの診療に携わっております。(図1)

  • 図1.手術の実績(センター開設から)

低侵襲(MIS)後方アプローチ:DSA(Direct Superior Approach)

 これまで後方からのアプローチは脱臼が多く、早期回復できないと言われてきました。 しかし、Direct Superior Approach (DSA)による低侵襲後方アプローチ(MIS)ではこれらの問題は解決されました。
当センターも含め、海外からの報告でも脱臼は非常に少なく、前方系アプローチで多くみられる手術に伴う骨折も少なく、早期の回復が得られています。(図2、図3)
このMIS DSAアプローチによるTHAを、ロボット支援手術で行っています。

◎MIS・DSAによるロボット支援の人工股関節

  • 図2
  • 図3

◎人工股関節置換術のスケジュール

  (通常は自己血貯血不要)
 
@ 手術前日 入院
A 術後1日 端座位、起立歩行開始
B 術後6日 T杖、日常生活の訓練開始
C 術後10日 退院
退院後 週1回程度の通院リハビリをおすすめしています。
(当院、またはお近くのリハビリ施設)

ロボット(Mako®)支援手術〈保険適応〉と股関節の調整

 正確にインプラントを設置するためにCT画像をもとにインプラントを設置するロボット(Mako®)支援手術を導入しております。
さらにできるだけ歩行しやすく、愁訴が少なくなるように長年の経験を活かした丹念な調整を行っています。
 また、手術のみでは残りうる股関節周囲の固まった筋腱をやわらげるため、リハビリを徹底して体に馴染むようにしております。

計画〜手術、リハビリ

 
@ 計画 術者は経験とエビデンスからそれぞれの患者さんにあうようなインプラント設置計画(位置、向き、下肢の長さ)をします。
A 手術、インプラント設置 計画とおりに人工股関節を機能的に良い位置(ストライクゾーン)に入れるためロボット支援手術を行います。ロボットでは計画とおおよそ2°、2mm以下の精度でインプラントを設置できます。(図4)
B 手術、バランス調整 より歩行しやすく、愁訴の残らないようにそれぞれの患者さんの股関節にあわせた筋腱、軟部組織のバランスの調整を追加します。通常は足の長さが感じない反対側から±5mm以内に調整します。手術は約1時間ほどです。

図4.ロボット支援手術、計画

ロボット(Mako®)支援手術<保険適応>変形が高度で、下肢が短い場合や固まった場合

 股関節の変形が進み高度になると、下肢が短くなったり、動きが悪く固まって しまい、痛みにに加えて歩行しづらさ(跛行の出現)で、通常の生活も困難に なってきます。
 この様に進んでしまった関節も、硬くなった筋肉や腱を調整しながら股関節が 機能しやすいところへ人工関節を設置します。無理なく可能な範囲で歩行しやすく 設置調整をします。そこで一役を担うのがロボットです。(図5、図6)
  • 図5.高度変形でのロボット支援手術:計画どおりに再現

  • 図6.小児期脱臼の股関節のロボット支援手術

ロボット(Mako®)支援手術<保険適応>のメリットを活かす

 当院ではCAS(コンピュー支援手術:ロボット支援やナビゲーション)を使用し、計画どおりのインプラント設置とスキルを活かした調整を加え、患者さんごとの股関節にあわせた股関節にすることを目指して手術を行ってきました。R4年の導入から700例ほどのロボット支援手術を行いましたが、さらに歩行しやすさを活かすためにR6年4月にロボット (Mako)を2台目導入しました。(図7、図8)
  • 図7.高度変形でのロボット支援手術:計画どおりに再現

  • 図8.小児期脱臼の股関節のロボット支援手術

リハビリテーション(Mako®)の推奨:痛みを減らし歩行しやすく

 人工股関節置換術をするだけで、股関節痛が消える訳ではありません。
股関節変形の疼痛は、傷んだ股関節だけからではなく、周囲の筋肉や腱などからも発生しています。
インプラントで股関節の位置や周りの筋肉や腱を調整した後は、下肢や体全体が新たな股関節に馴染まないと痛みが残ったり、発生することもあります。 そこでより良くするために重要なのがリハビリです。(図9、図10)
  1. 入院中には歩行や家庭での生活が出来るようにリハビリを行います。
  2. 退院後は、下肢や体全体が新たな股関節に馴染むように、股関節周囲を やわらげるストレッチを中心に自主トレーニングと、週一回程度の通院 リハビリおすすめしています。(図11)
疼痛がなくなり、できるだけ快適な生活や歩行をするために行っております。
※希望の方はプールでのリハビリも行っております(体調にもよります)。
  • 図9.リハビリ

  • 図10.水中リハビリ

  • 図11.退院後もおすすめるストレッチ体操

人工股関節後の体の制限

 人工股関節置換術後には、体の動かし方の制限があることが知られています。
現在の人工股関節はインプラント素材の改善より、制限が少なくなっています。
 インプラントが体に馴染むまでの約3〜4ヶ月までは制限があります。 主な制限は、深く曲げることです。 その後は、衝撃を強く受ける運動(格闘技、飛び降りる)や、沢山動かすことに なるマラソンを避けることです。

手術の成績、合併症

 ロボット支援手術では、下肢長や股関節の位置を理想的な位置に可能な限り近づけ て手術をしますので、歩行は綺麗になりやすいです。
 しかし、手術は全身麻酔下で行いますが体にはストレスがかかり、創を作って インプラントを入れます。そのため、残念ながら不都合な合併症が起きることが あります。(図12)
  • 図12.手術成績、合併症(R3〜5年度、初回人工股関節 1135関節)

対象となる患者さんや疾患は?
 主に3つの疾患を治療します。
 1つめは、大人の変形性股関節症です。(図1、図2)
 小さい頃から寛骨臼が浅く、寛骨臼形成不全股関節の軟骨が減ってくる病気です。(図3)
治療法として、軟骨が十分残っている場合には、寛骨臼回転骨切り術(図4)や骨盤骨切り術、 大腿骨骨切りなどの骨切り術(矯正手術)が行われます。


しかし、軟骨がある程度減ってきた場合には人工股関節置換術(図5)が適用となります。


 2つめは、最近病態が明らかになってきた大腿寛骨臼インピンジメント(FAI)という病気です。
股関節の滑らかな動きができなくなり骨のぶつかりや関節唇が挟まり傷んでしまう病気です。〈関節唇損傷〉



 3つめは大腿骨頭壊死症(図6)という大腿骨頭の血液の流れがなくなる病気です。
血液の流れがなくなると骨がだんだんと潰れてきて、股関節痛が強くなります。
血流のなくなった部分が比較的小さく、若い人の場合には大腿骨頭回転骨切り術(図7)を行います。
血流のなくなった部分が大きい場合には人工股関節置換術を行います。


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