乳腺外来

乳腺外来の診療

今、女性が罹患するがん第1位、それが乳がんです。 乳がんは、食生活の欧米化などにより年々その罹患数は増加しており、今後も増加すると予想されています。 その予防と治療について当院の取り組みをご紹介いたします。

乳がん治療方針

手術

乳房温存手術
原則として術後放射線療法を併用
扇状部分切除、円状部分切除
切除断端がん遺残陰性を目指すが、必ずしも陰性にこだわらない(がん遺残が陰性でも 陽性でも放射線治療により局所再発は年0.8-1.0%に抑えられる。また陰性でも局所再発 する)。局所再発(乳房内再発)の数値は、第1期乳がんの遠隔転移再発の年約2%を 大幅に下回るし、局所再発の多くは、その時点で乳房切除すれば生命予後は変わらない 。しかし、一部の局所再発は、遠隔転移再発(生命予後に直結)に関連して起こる。

  • 温存手術後の放射線治療(照射)省略について
    十分なインフォームドコンセントののち、術後放射線療法を省略することもある。

乳房切除
大小胸筋温存乳房切除
大胸筋浸潤がある場合は大胸筋部分切除あるいは浸潤範囲によっては大胸筋合併切除

腋窩リンパ節郭清
レベル2までを原則とするが、原発巣の状態、MD-CTの画像情報、触診、術中の状態により、個々にレベル1+αからレベル3までを考慮する。
しこりの大きい症例や内側症例で腋窩リンパ節腫脹例には、ロッターリンパ節郭清も考慮する。

リンパ節郭清の省略
以下の場合、十分なインフォームドコンセントのもとに腋窩リンパ節の省略を行う。

  • センチネルリンパ節生検(みはりリンパ節生検)について
    対象は、リンパ節転移がないと考えられるもの、すなわち触診、超音波検査 およびMD-CTでリンパ節腫脹がないもの。
    ただし、小さくて転移がないと考えられる場合 対象としてもよい。
    保険適応。
    精度は98%以上。
    主としてRI・螢光色素併用法法で行っている。
    偽陰性の場合の対処法:放射線治療、化学療法、内分泌治療。
  • 腋窩郭清非施行
    非触知微細石灰化病変でマンモトームで診断された例や、小さなしこりで発見されたような症例に関しては、まず、乳房部分切除をし、ly0であれば、他の悪性度の因子なども考慮の上、リンパ節郭清を省略することがある。
    これまでの当科の臨床研究では、ly0は全例リンパ節転移陰性であった。

術前化学療法

局所進行乳癌や、温存手術のための縮小をはかる場合には、EC100を3週ごとに4回、その後ドセタキセルを3週ごとに4回を原則とする。

術前内分泌療法

高齢者などの特殊な場合を除いては、エビデンスが出るまでは原則として行わない。

術後治療

ガイドラインにしたがって、その評価に基づき適切な化学療法、内分泌療法を実施する。

  • FEC60
  • EC100→ドセタキセル
  • CMF
  • 特殊な方法としてUFT, フルツロン+エンドキサンなど
  • 内分泌療法としてノルバデックス、フェアストン、アリミデックス、アロマシン、フェマーラ、 ゾラデックス、リュープリン、ゾラデックスまたはリュープリン+ノルバデックスまたはアリミデックスなど

診察内容

乳腺外来では乳がんを中心に全ての乳腺疾患の診療にあたっています。

  • 乳腺疾患の診断
    視診・触診・マンモグラフィ・超音波検査・CT・MRI・細胞診および針生検などを駆使して、正確な診断に努めております
  • 手術の縮小化(乳房温存手術、センチネルリンパ節生検など)
  • 乳がん手術後の化学療法
  • 再発および転移性乳がんの治療
    外来化学療法室を完備し、心地よい空間での治療を提供できるよう努力しております
  • マンモトーム生検
  • 乳房再建手術(形成外科にて)

検診・予防 〜乳がんを早期発見をするためには〜
これまで、乳がん検診は視・触診が一般的でした。より早期の乳がんを発見するために、アメリカ・ヨーロッパで一般的に用いられている「マンモグラフィ」は触診ではわからない「がん」を見つけることができることから、精密検査だけでなく検診にも用いられています。 当院では平成12年より乳がん検診に「マンモグラフィ」を導入し、乳がん検診の専門資格を有する診療放射線技師が撮影を行い、専門資格を有する医師が読影・診療を行っています。

マンモグラフィ(乳房X線撮影)について

マンモグラフィは、乳房をはさんでX線撮影する検査です。乳房は柔らかい組織でできているために、専用のX線装置を使って撮影します。 (当院では「MAMMOMAT Inspiration」を導入しています。)

撮影では病変の見落としが無いように、乳房全体をはさんで、写真を撮ります。乳房は人により厚みも大きさも異なりますので、よい写真を撮るためには乳房をなるべく均等に圧迫します。この圧迫をすることにより、小さな病変部を拾い上げ、X線の被爆をより少なくすることができます。

当院では撮影前に検査の内容を診療放射線技師より説明させていただきます。「痛いのではないか」など、検査に対する不安や疑問を取り除きます。

施設・スタッフ紹介

専門の資格をもった医師が診療にあたります

もし乳がんの疑いがある場合、もしくは病変が見つかった場合、当院では乳がんの治療に関する専門の資格をもった医師が治療にあたります。また患者さんにとってよりよい治療をするため、患者さんの不安な気持ちなどをお聞きするご相談にも応じています。

医師紹介
野水 整 星総合病院院長
日本乳癌学会専門医および同評議員
同専門医認定
修練施設認定委員(東北地区委員長)
日本乳癌検診学会評議員
福島県立医科大学医学部外科臨床教授
福島県医師会生活習慣病検診委員会乳がん部会委員
福島県成人病管理指導協議会乳がん部会委員
片方 直人 星総合病院外科統括部長
日本乳癌学会専門医
松嵜 正實 星総合病院外科部長
日本乳癌学会専門医
マンモグラフィ読影有資格医師
野水 整 星総合病院 病院長
渡辺 文明 三春病院  病院長
片方 直人 星総合病院 院長補佐 兼 外科統括部長
松嵜 正實 星総合病院 外科部長
岡野 舞子 星総合病院 外科医師
長塚 美樹 星総合病院 外科医師
マンモグラフィ撮影有資格技師
白石 嘉博 星総合病院 診療放射線技師
佐々木 鮎美 星総合病院 診療放射線技師

また当院は、以下の認定施設となっています

  • 日本乳癌学会専門医認定修練施設
  • マンモグラフィ検診施設画像認定施設
  • 郡山市検診施設

マンモトーム生検について

マンモグラフィや他の検査で病気と疑わしい場合、組織を直接採取して病理組織検査が必要となります。 これまでは皮膚を切開し、組織を切除して取り出す方法が行われてきました。 しかしこの方法では検査後、傷が大きく残ってしまうという問題点や、非触知病変(触診では診断することが難しいもの)や石灰化病変(硬く沈着したもの)では生検をする部位が正確に判定できないという問題点もありました。
そのため、当院では平成13年7月に立体画像解析システムとマンモトームを組み合わせたシステム(ステレオマンモトームシステム)を導入し、この問題について解決を図りました。
マンモトームでは、乳房の病変が疑わしい部分に針を刺し、組織を採ることができます。 そのため、検査後は針を刺した傷のみであり、痕はほとんど残りません。 また医師が病変の適確な場所を設定し操作を行うため、安全に検査をすることができます。
このマンモトームは特に非触知(触診では診断することが難しい)乳がんや・石灰化病変に適応する検査です。 また、検査への抵抗が少ないこと、早期の発見ができることから、当院ではマンモトームの導入後、乳がんの患者さんへの乳房温存術の件数が増加しました。 なおこのマンモトームを導入している医療機関では、当院が福島県内で随一の施設です。

センチネルリンパ節生検

脇窩(えきか)リンパ節について

乳がんの患者さんの約60%は、脇の下(腋窩)のリンパ節に転移がありません。従来の画像検査(超音波検査やCT)では、手術前に転移の有無を正確に診断できないため、根治療法としてすべての患者さんに対して画一的にリンパ節を切除する手術(腋窩リンパ節郭(かく)清(せい))が行われてきました。しかし、脇窩リンパ節郭清の合併症として現れる、上肢の浮腫(むくみ)や運動障害、知覚障害などに悩む方も少なくありませんでした。
そこで、リンパ節転移のない方には脇窩リンパ節郭清を行わずに済むよう、脇窩リンパ節への転移を正しく診断する方法として新しく開発されたのが「センチネルリンパ節生検」です。

センチネルリンパ節生検について

センチネルリンパ節とは、脇窩リンパ節の中では最初に転移するリンパ節を指し、がんの転移を見張っているので「見張りリンパ節」とも呼ばれています。センチネルリンパ節生検とは、アイソトープや色素を用いて乳がんからのリンパの流れを正確に追うことで、手術中にセンチネルリンパ節を見つけ、転移の有無を診断する方法です。転移がなければ脇窩リンパ節郭清を省略でき、手術の後遺症である上肢の浮腫などを防ぐことができます。当科ではラジオアイソトープ(RI・螢光色素併用)法で行っています。 転移の有無の判断は最新のOSNA法と細胞診の併用で行っています。

保険適応

先進医療として始まりましたが、現在は保険医療です。

これまでの治療実績

平成元年(乳腺外来開設)以降〜平成27年12月31日までの実績を示しています

全乳房・乳腺疾患
手術件数
乳がん(初発例) 化学療法件数
(外来・入院合計)
平成20年 203例 153例
平成21年 174例 162例
平成22年 191例 162例
平成23年 147例 124例
平成24年 213例 187例
平成25年 202例 175例
平成26年 216例 201例
平成27年 223例 204例
  • 再発乳がんの患者さんの約半数は他院からの紹介となっています。
  • 当院で手術を受けた患者さんの乳がん再発率は10%です。
  • なお乳房再建に関しても、当院形成外科での対応をしております。

当院では新しい乳がん治療薬の臨床試験を行っております。 臨床試験については当財団ホームページ「治験・臨床実験」をご覧下さい。 外科医師の発表論文については、DrNOMIZUのホームページに掲載しています。

臨床研究に関する情報公開

星総合病院外科では、当院倫理委員会の承認を得て下記の臨床研究を実施します

臨床研究への同意

  • 臨床研究をおこなう場合に、研究計画を説明し対象の方の同意を得る必要があります。 対象となる患者さんで当院外科外来に定期通院されている方には、外来受診時、個別に説明し文書での同意をお願いいたします。 そうでない患者さん・ご家族の方は下記の研究概略をお読みの上、研究参加のご同意をいただけない場合にのみ、2017年9月30日までに星総合病院研究連絡窓口までご連絡をお願い申し上げます。

    連絡窓口:星総合病院診療録管理センター 電話024-983-5563

研究概略

  • 「トリプルネガティブ乳癌における生物学的特性と化学療法治療効果に関する臨床的研究」

    研究責任者:野水 整
    主任研究者:片方直人
    共同研究者:松嵜正實、村上祐子、長塚美樹、野水 整

    研究期間:2016年4月1日〜2017年9月30日
  • 研究の意義・目的
    乳癌のなかでも内分泌反応がなく(ER(-)、PgR(-))、HER2蛋白発現のない(HER2(-))乳癌をトリプルネガティブ乳癌と呼び、ホルモン感受性のある(内分泌反応あり)乳癌やHER2タイプの乳癌に比べ悪性度の高い乳癌で、薬物治療としてはホルモン治療もハーセプチン療法も効かず、唯一抗癌剤治療に頼らざるを得ない乳癌です。最近話題になっている遺伝性乳癌でもトリプルネガティブ乳癌が多いという報告があります。抗癌剤治療も非常によく効く症例からあまり効かない症例までさまざまで、現時点では抗癌剤治療をやってみないと効果がわからない、しかしやるしかないという現状です。そこで、このトリプルネガティブ乳癌の生物学的特性を明らかにして、抗がん剤の効き具合とどのような関係があるかを明らかにしたいというのが今回の研究です。
  • 対象と方法
    星総合病院外科で、2006年以降トリプルネガティブ乳癌で術前抗癌剤治療を受けてから手術をした人が対象です。
    研究方法は抗癌剤治療の前に行った針生検の検体で新たに癌組織がBRCAの機能と関係があるかどうか(BRCA-nessという状態かどうか=BRCA遺伝子が正常に機能している乳癌かどうか)を検査し、臨床病理学的諸因子(年齢、腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無、病理組織型、病理学的悪性度など)とあわせて、抗癌剤の効果との関係を解析します。
    BRCA遺伝子はDNA損傷修復に関係する遺伝子で、遺伝性乳癌卵巣癌の原因遺伝子でもあります。遺伝性乳癌卵巣癌の乳癌ではトリプルネガティブ乳癌が多いとされています。
  • 研究成果
    研究に参加していただいた個人の情報を保護したうえで(どこどこのだれだれさんということをわからなくする)解析したデータを日本乳癌学会や日本臨床外科学会などで発表します。トリプルネガティブ乳癌の治療で困っている現状に少しでも役に立ちたいと考えています。後日論文化も考えています。個々の検査結果は特別要件に当てはまったケース(後述)以外はお伝えしません。
  • 研究成果の保存・利用
    得られた研究成果は保存し、トリプルネガティブ乳癌の研究に利用することがあります。
  • 個人情報の保護
    個人情報はすべて厳重に保護され、研究成果の発表では個人が特定できないようにします。
  • 検査結果の通知について
    癌組織でBRCA-nessという状態であった場合には、遺伝性乳癌(HBOC)の原因遺伝子であるBRCA遺伝子に変異がある場合があります。したがってBRCA-nessであった場合には、個別に通知し、当科「がんの遺伝外来」を受診し(再診料のみ)、BRCA遺伝子検査を受けることができます(有料)。