がんの遺伝外来

「がんの遺伝」について

私たちは、遺伝子情報を適切に医療の場で生かす遺伝子診療を全国に先駆けて行っています。

日本では2人に1人は「がん」になる時代です。どのようながんでも数%は親から子へ遺伝するタイプだと言われています。
その中で原因遺伝子が解明されているものはたくさんありますが、一般診療科として扱うものには、家族性大腸腺腫症(ポリポーシス)、リンチ症候群をはじめとする遺伝性大腸癌(消化器科、外科)、内分泌臓器とくに甲状腺を中心とする多発性内分泌腫瘍症1型2型(外科、脳外科)、家族性乳癌(外科)、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(外科、婦人科)、網膜芽細胞腫(小児科、眼科)、いろいろな臓器にがんや腫瘍が多発するリー・フラウメニ症候群(小児科、整形外科、外科など)、フォン・ヒッペル・リンドウ病(脳外科、眼科、泌尿器科など)、神経線維腫症1型・2型(脳外科、外科、神経内科など)などがあります。
これらの疾患の症状や兆候は多科にまたがることから、正確な知識がないと診断が遅れる場合があります。 これを解決するには診療科どうしの横の連携を密にすることと、全体をコーディネートする「がんの遺伝」の専門家が必要になります。
星総合病院では1991年に「がんの遺伝外来」を設立し、遺伝性のがんに関する診療を精力的に行ってきました。

遺伝性腫瘍・遺伝性のがんについて

がんは長い時間をかけて遺伝子に傷(これを「変異」または「病的バリアント」と呼びます。)が蓄積することによって生じる病気ですが、この中にはご家系の中で「がんになりやすい体質」が受け継がれていることによって生じるタイプがあります。(がんの種類によって違いますが、およそ数%)これを「遺伝性腫瘍」または「遺伝性のがん」と呼びます。
遺伝性腫瘍には、次のような特徴があります(必ずあてはまるわけではありません)。

  • 一般の方よりも若年でがんを発症する
  • 家系内で同じがんになる人が多い
  • 1人が何度もがんを罹患する
  • 両側にがんが発症する(乳房、網膜、腎臓など2つ臓器がある場合)
  • 通常はあまり見られないようながんを発症する(男性の乳がんなど)
  • 特定のがんの組み合わせが家系内に多く見られる(例えば乳がんと卵巣がん、大腸がんと子宮体がんなど)
  • 遺伝性腫瘍には、前述したようにいくつか原因となる遺伝子が判明しているものがありますので、例えば遺伝子変異を持っているかどうかを調べて(これを「遺伝学的検査」または「遺伝子の検査」と呼びます。)、ご自身やご家族の健康管理を考えることができます。
    しかし、遺伝的にがんになりやすい体質を持っているかどうかを知ることに不安を感じたり、悩む方もいらっしゃいます。
    そういった方々に対して、私たち「がんの遺伝外来」では、遺伝性腫瘍に関する相談をお受けし、支援する「遺伝カウンセリング」を行っています。
    必ずしも検査を受けることが正解ではありません。
    皆様の不安が少しでも和らぐようお手伝いできればと考えていますので、お気軽にご相談ください。

「がんの遺伝外来」について

がんの遺伝外来では、遺伝性腫瘍・がんが疑われる患者さん、およびその家系の方の遺伝相談・遺伝子診断(ご希望に応じて)などを行います。
外来枠は水曜日の午後です。(14:00〜もしくは14:30〜の2枠が基本ですが、詳細はお問い合わせください。)

検査項目

遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)・・・BRCA1/2遺伝子

@保険診療の場合:3割負担で約60,000円

以下の条件に当てはまる場合、保険診療で検査を受けることができます。

  • 45歳以下での乳がん発症
  • 60歳以下でのトリプルネガティブ乳がん発症
  • 2つ以上の原発性乳がんを発症
  • ご本人が乳がんを発症しており、かつ第3度近親者内(両親、きょうだい、子供、甥姪、孫、祖父母、いとこ)に乳がん又は卵巣がんを発症した方が1名以上いる
  • 卵巣がん/卵管がん/腹膜がんを発症した方
  • 男性乳がんを発症した方
  • ※これらにあてはまる=遺伝性 というわけではありません。
    ※薬物療法の選択のためにBRCA1/2遺伝子検査を行う場合もあります。(同様に保険診療)

A自費診療の場合:約100,000円


遺伝性大腸がん・胃がん・消化管ポリポーシス(家族性大腸腺腫症、リンチ症候群、
カウデン症候群、ポイツ・イェガース症候群、若年性ポリポーシス症候群など)…研究費での診断可
※対象となるかは事前に必ずお問い合わせ下さい。


多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)…RET遺伝子:有料(保険診療)


リー・フラウメニ症候群…TP53遺伝子:有料(自費診療)


カウデン症候群…PTEN遺伝子:有料(自費診療)


遺伝性腫瘍に関わる複数の遺伝子を同時に調べるパネル検査(約200,000円〜300,000円)


ご相談のみの場合は自費診療扱いとなり、30分5,000円(税別)です。

完全予約制となります

    【初診】予約はお電話で地域医療連携センターまでお願いします。

    ― 必要な資料 ―
    ・臨床情報(既住歴、病理、画像など)
    ・家族歴や家系図(遺伝学的検査の適応判断のため)
    ※当院に通われている方は主治医もしくは認定遺伝カウンセラーまでご相談ください。

    【再診】予約はお電話で外科外来か遺伝外来担当者までお願いします。

    がんの遺伝外来に関するお問い合わせは メール:Mail:nomizu@hoshipital.jp まで
    もしくはTEL:024-983-5511(代表)にお電話いただき、「遺伝外来」をお呼び出しください。

担当スタッフ紹介

担当医:野水 整(のみず ただし)

  • 星総合病院 総長院長
    前 福島県立医科大学第二外科非常勤講師
    前 東北大学加齢医学研究所癌化学療法非常勤講師
    福島県立医科大学外科臨床教授
    前 家族性腫瘍研究会幹事世話人
    前 家族性腫瘍研究会倫理委員会委員
    前 日本家族性腫瘍学会理事
    日本遺伝性腫瘍学会専門医・指導医・評議員
    東北家族性腫瘍研究会事務局
    日本人類遺伝学会会員
    大腸癌研究会遺伝性大腸癌研究プロジェクト委員
    前 日本遺伝性乳癌卵巣癌症候群総合診療制度機構(JOHBOC)登録部会委員
    厚生労働省・文部科学省関係のがんの遺伝に関する多くの研究班の班員・研究協力者

    ・第8回 リンチ症候群研究会シンポジウム 市民公開フォーラムHP


認定遺伝カウンセラー®:勝部 暢介(かつべ ようすけ)

  • 遺伝性腫瘍に関する情報提供や心理・社会的サポート、外来の予約調整、各科との調整、
    当事者会の運営サポートなどを行っています。
    認定遺伝カウンセラーの役割や使命については こちらの動画で紹介されています。

    ― ご紹介 ―
    ・ジェネティックハンド
    遺伝性腫瘍を含む遺伝性疾患の患者さんやそのご家族、さらに医療関係者も集まり交流をはかるとともに、 知識を深める場として、毎年数回の集会を企画しています。詳細は こちらの専用ページをご覧ください。

    ・広報誌「懸虹(けんこう)」に掲載された記事
    私たちの取り組みや遺伝医学に関するホットな話題について、認定遺伝カウンセラーの解説とともに掲載しています。ぜひご覧ください。 → 広報誌「懸虹(けんこう) No.302(R 2. 1)」