三春病院 訪問看護ステーション リハビリテーション病棟

回復期リハビリテーション病棟


橋本正則(ハシモト・マサノリ)
数年前に脳梗塞により急性期病院での治療後、当院の回復期リハビリテーション病棟へ入院される。 入院当時は歩行障害があり、嚥下障害により食事も取れなかった。その後のリハビリで徐々に声が出せるようになり、普通の食事が出来るようになった。 歩行も自立され、入院65日目に退院。入院時に発声練習のつもりで始めたギター演奏を機に、退院後はギターの同好会に参加して演奏活動を行うなど精力的な活動を行っている。

ギター演奏を始められたきっかけを教えて下さい
私は元々、大学時代にお遊び程度でギターをやっていました。 しかし、仲間内で音合わせもせずにやっていたので演奏といえるほどのものではありませんでした。 その後、ギターには全く触れずに過ごしていたのですが、こちらに入院してから妻やリハビリスタッフの勧めがきっかけで、 ギター演奏や歌の練習を行うようになりました。
入院時はどのような状態だったのでしょうか?
入院当時は、手伝ってもらいながら何とか歩行器で歩く事はできていたものの、ご飯を食べることが出来ずに、鼻から入れたチューブから栄養を流している状態でした。 その後1ヶ月ほどしてから徐々に食事が出来るようになってきて、少しづつ一人でも歩けるようになりました。
現在はどんな活動を行っていますか?
退院後から音楽好きの仲間が集まる喫茶店に通うようになり、月に一回そこでライブコンサートを行っています。皆上手いので、追いつくのに一生懸命です。 また、音楽仲間に誘われて高校時代にやっていた卓球も始めました。 秋の体育祭では、卓球同好会の部で3位入賞を果たすこともできました。 これからもギター演奏と卓球を続けていきたいと思います。
担当スタッフのインタビュー
言語聴覚士より
言語聴覚療法では、橋本さんの「口から食べたい」という強い希望や退院後の生活環境を考慮し、発声練習や口の体操、飲み込みの練習を中心に行いました。 また、耳鼻科医と連携し飲み込みの検査(嚥下内視鏡検査)も行いました。

特に橋本さんの場合、食事の前に管を飲み込んで食べ物を飲み込みやすくする練習(バルーン拡張練習)を行うことで、少しずつ口から食べられるようになりました。

初めは、昼食前に言語聴覚士が行っていたバルーン拡張練習も、徐々に習得していただき、看護師やリハビリスタッフの協力も得ながら、1日3回食前にご自身で行うことができるようになり、 合わせて食事も1日3食摂れるようになりました。 さらに少しずつ食事の形や量を工夫し、退院時にはご本人の希望である”とんかつ”が食べられるまで回復されました。

橋本さんの理解や周囲の協力を得ながら症状に合わせたリハビリを進めるとともに、橋本さんの「口から食べたい」という強い思いと努力の積み重ねが回復につながったのではないかと思います。

とても厳しいスタートではありましたが、明るく前向きに取り組まれる姿勢が好印象でした。 その姿勢に動かされ、私自身だけではなく、スタッフみんなで「食べてもらいたい」と回復を後押しできたのではないかと思います。 少しふっくらされ、大きな声で歌を歌われる姿を拝見すると当時のことが懐かしく、現在の回復に感動する思いです。
作業療法士より
入院当初は今後の見通しが立たず、心身ともに疲弊している状況でした。 そのため、橋本さんのこれまでの生活を聞き、生活様式・仕事の内容のほか、 大切にしている時間・楽しみにしていることなどご自身の活力となっているものを教えていただきました。

その中で、数ヵ月後に好きな歌手のコンサートに行く予定があるということから話が弾み、”音楽のちから”を合言葉にリハビリテーション医・各職種からのアドバイスを頂きながら ギターの弾き語り演奏を通して心理面のサポートと嚥下機能への間接的なアプローチを行うことになりました。

まったくの初心者である私にチューニングの仕方やコードの押さえ方、曲を通しての学生時代のエピソードなどを教えてくださりながら、時には私の拙いウクレレとセッションするなど、橋本さんがいきいきしている時間でした。

かすれた声からのスタートでしたが、いつしか”観客”もみられるようになり、退院時には人生初のコンサートを開いてくださいました。 退院後も音楽を通して交流の範囲がひろがっていることをとても嬉しく思います。

あとがき

今回、にこやかな表情で橋本さんにインタビューにお答えいただきました。 病気を発症後からのリハビリは大変だったと思いますが、こうして様々なことに精力的に取り組まれている姿を拝見してとても嬉しく思いました。 今回のコンサートでは皆さんが熱心に演奏を聴かれていました。 これからも素敵なコンサートを続けて下さい。

コンサート実行係りより

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